タックスエンターテイメント小説 〜

「税務調査最前線」

第7話『こいつら取調室だな』第44章

 (〜ウソ言ってんじゃないよ!〜)

 

(所得税の調査は、スムーズに進行していった税務署員は増差税額の計算までしていたのだった。)

 

 小石川宅の応接室に残った多田税理士は、税務署員の資料を書き写したメモを眺めながら昭夫に話すのであった。

 

「小石川さん。まあ、仕方ないですよ。え〜と、増差税額ですが・・。つまり、修正申告して納めることになる税金のことなんですけど、平成12年分の所得税が約13万円で消費税約1万円です。そして、平成13年分ですが、所得税が約82万円で消費税が約5万円になりますね。」

 

「え〜、そんなになるんですか・・。平成13年分の売上洩れは160万円くらいなんですけどね・・。はあ〜。」と、昭夫はため息をつく。

 

「まだ、あるんですよ。売上を少なく計上するために帳簿・伝票を書き直したりしてますので、重加算税もかかってくるんですよ。それに、単純ミスでも過少申告加算税も本税以外にかかってきますから、合計ですと平成12年分が約3万円で平成13年分は約22万円になりますね。この重加算税と過少申告加算税は、修正申告した後に税務署の方から納付書を送ってきますので、それから納付ということになります。」

 

「本税以外にも税金がかかるんですね。」と、昭夫はまだ不満顔だ。

 

「まだ、あるんですよ」と、多田税理士。

 

「えっ、まだあるんですか・・」と、昭夫。

 

「はい、延滞税があります。つまり、当初の申告の法定申告期限つまり3月15日から修正申告書を提出した日までの期間分の増差税額分の金利みたいなもんですね。これも、税務署が計算して納付書を送ってきますのでそれから納税ということになります。あっ、修正申告については、その提出日が納期限ですから、申告書の提出日に増差税額の納税も済ませないと、また、延滞税が発生しますのでね。」と、多田税理士。

 

修正申告の場合の延滞税は、当初の納期限から修正申告書を提出した日の2ヵ月後までの期間が原則年7.3%で2ヶ月経過後にも税額の未納が続けば納付完了の日まで年14.6%の割合で計算することになっているのだ。

 

「修正申告の場合には、申告書提出日が納期限となりますから、その提出日から2ヶ月間未納であっても年7.3%の割合を適用し、納期限の翌日から2ヶ月を経過した期間は年14.6%の割合で計算することになっているんですね。今は、平成15年ですから年7.3%については特例があって公定歩合プラス4%でいいことになっていますので、おそらく年4.5%くらいじゃないでしょうか。14.6%については割合が下がる特例はありませんね。」と、多田税理士は税務手帳をパラパラめくりながら説明するのであった。

 

「14.6%ですか。サラ金並みの金利じゃないですか。国もアコギなことするもんですね。こりゃあ相当高いですね。じゃあ、修正申告書を提出してしまっても納税が遅れてしまうとバカ高い金利がかかることになるんですね。なんか特例とかありませんかねえ。」

 

 昭夫に質問された多田税理士は、忙しく税務手帳をめくるのであった。

 

「あ〜、あった。え〜とですね。修正申告までの期間が1年間を超える場合には、当初の納期限から修正申告までの期間の延滞税は年7.3%つまり特例で年4.5%の割合で計算することになってますね。それで、計算ミス程度の修正申告の場合には、1年間だけの延滞税を計算すればよくって、後の期間は延滞税の計算から控除されることになってますね。」と、多田税理士。

 

「おっ、そうですか。1年間分の延滞税でいいんですね。しかも、ぶっ高い金利の方じゃないんですね。」と、昭夫の顔が明るく変化した。

 

「いえいえ。小石川さんのように重加算税がかかるような修正申告については、この期間控除は認められていないんですね。ですから、小石川さんの場合は当初の納期限から修正申告までの全期間について年4.5%の延滞税がかかると思います。税務署の方で決定して計算して納付書を送ってきますので、その時どんな取り扱いをされたのか確かめることができますけどね。それと、14.6%につてはなんの特例もないようですね。」と、多田税理士は税務手帳を閉じた。

 

「そうか、修正申告をしたら2ヶ月以内に納税できる見込みじゃないといけないんだ。納税が2ヶ月遅れただけでサラ金並みの金利を取られたんじゃたまったもんじゃないですね。じゃあ、修正申告しなかったらどうなるんですか。」と、昭夫。

 

「そりゃあ、更正処分を受けることになるでしょうねえ。結局、修正申告と同じ金額の税金を取られることになるんですよ。納期限と異議申し立てについて修正申告と更正処分は違いますけどね。」と、多田税理士。

 

「えっ、どういうことなんですか。」と、身を乗り出す昭夫であった。

 

「つまり、修正申告の場合、申告書の提出日が納期限となりますし、自ら誤りを認める申告ですから、以後、異議申し立てとか不服を申し立てることはできないんですね。一方、更正処分の方は、更正通知書を発した日から1ヵ月後が納期限なんです。また、青色申告の場合には、更正の理由を書かないといけないことになってましてね。そして、更正処分に不服がある場合には、税務署に異議申し立てができるんですね。」と解説する多田税理士。

 

「え〜じゃあ、修正申告の方が断然納税者に不利なんですね。じゃあ。更正処分してもらおうかな・・」と、考え込む昭夫であった。

 

「まあ、この所得税の件では、全て明らかな申告洩れですから、異議申し立てしてもまったく勝ち目はありませんよ。かえって問題が長引いてしまいますし、それに、異議申し立てをすると、その件でまた税務署員が調査に来るようになるんですよ。それでも良いですか。」と、多田税理士。

 

「え〜、また調査だなんて、もういいですよ。多田先生。修正申告でいきましょう。先生よろしくお願いします。」と、昭夫は深々と頭を下げた。

 

「いやいや、そんなに大げさに頭をさげなくてもいいですよ。アハハ。でも、お父さんの所得税については何にも言わなかったじゃないですか。良かったですよね。当初は、お父さんが年間300万円を7年間もゴマカシていたと言われていたんでしょ。それに比べたら今回の修正申告で済めばラッキーじゃないですか。ねえ、小石川さん。」と、多田税理士は、昭夫に微笑む。

 

「そうですね。あの時は年間300万だ、7年間だ、で途方もないことを言われてましたから、確かに、今回の修正申告の内容であれば文句ありません。ただ、重加算税とか延滞税はまったく無駄ですよね。もったいないなあと思います。やっぱりちゃんと正直に申告しとけばよかったんですよね。自業自得ですね。」と、昭夫は自分のいい加減さを反省した。

 

「そうですね。きちんと申告してれば、重加算税や過少申告加算税はかかりませんし、延滞税もかかりませんからねえ。今後、きちんとされてくださいね。じゃあ、こちらも、税務署が計算した内容に間違いないか確かめまして、修正申告書の作成にかかりますので、よろしいですか。」と、多田税理士。

 

「はい、よろしくお願いします。」と、昭夫。

 

多田税理士は、小石川宅を出た。疲労感はあるものの充実感も感じていた。納税者の期待に応えられたからなのだろう。

 

 相続税の調査も、自分たちが認めている申告洩れについてだけで終わるものと期待していたのだが、待てど暮らせど相続税の調査の連絡が来ないのだ。

 

 次号へ続く。


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