〜 タックスエンターテイメント小説 〜

「税務調査最前線」

第5話 『呪われた飲食店』第4章

 (〜病気になったのはなぜ〜)

 前回3章のあらすじ

(『小料理ふじやま』では、売上伝票を3年分しか保存していなかった。堤調査官は、みるみる表情が険しくなり、多田税理士に激しく迫ってきた。多田税理士は困り果ててしまっている。)

 堤調査官は、刑事が犯罪者の取調べをするように、激しく静江に問いただしている。

「ダメじゃないですか!売上の証拠である売上伝票をなくしてしまったでは済まされませんよ。とんでもないことですよ。売上の証拠をかくさなきゃならんことでもしたんじゃないですか。」と堤調査官。



「あのー、レジペーパーが残っているんで、それではだめでしょうか。レジの売上と帳簿の売上はキチンと合ってるはずなんですけど。」恐る恐る、静江は堤調査官に返答するのであった。

 が、突然、堤調査官が怒鳴りだしたのである。

「売上をゴマカシているんだろう。そうなんだろう。レジなんか、打たないと売上は記録されないのは分かりきったことだろう。売上伝票は客に見せるものだから、売上伝票が本当の売上の証拠になるんだよ。

「多田先生もそう思われるでしょう。売上伝票が売上の証拠であることに間違いないでしょう?ねえ、多田先生」と堤調査官は、多田税理士に同意を求めた。

「確かに、売上伝票は、お客さんが見て注文を確かめるのもんだけど、ここではどんな料理をたのんだとか、酒を何本注文したとかは書いてあるんですが、売上金額自体は売上伝票には書いてないですよ。」

 なんとか、返答する多田税理士であったが、内心は、「売上の証拠である売上伝票がないとは困ったなぁ。確かにレジは打たないと売上の記録は残らないから、やっぱり売上伝票がないと売上をゴマカシていると思われても仕方ないのかなぁ」と自問自答していたのであった。

 多田税理士がなんと返答して良いのか困っているのが、堤調査官にも分かったようである。

「多田先生、何を言っているんですか。その注文の記録自体が売上の記録じゃないですか。立派な売上の証拠に決まっているじゃないですか。

 堤調査官は、多田税理士に向かって納税者への指導がなっていないと攻めてきたのであった。

「だいたいですね。レジペーパーだけがあればいいなんてことはないんですよ。多田先生は書類の保存について適正に指導されてないじゃないですか。こんなことでいいんでしょうかね。指導不足じゃないですか。ねえ、多田先生」

「うーん。指導不足だなんて、それは、言いすぎじゃないですか。」と多田税理士は苦しい。

「どうしてですか、事実じゃないですか。先生も知ってるでしょうが、脱税の場合は7年さかのぼるんですからね。覚悟はいいですか。青色申告も7年さかのぼって取り消すこともできるんですからね。分かってますか。

「いや、それは分かっていますが、まだ、脱税したとは決まってないじゃないですか。もっと、おだやかにいきましょうよ。」と返答するのが精一杯の多田税理士であった。

 静江は、4〜5年前の売上伝票が見つからなかったことがこんな重大なことに発展するとは思ってもおらず、ただ、「なんか大変な失敗をしてしまったのだ。どうしよう。沢山税金を払わされるのかしら。」と心配でたまらない。

静江の心臓は、ドクドク高鳴り、顔はほてってしまい、軽いめまいが襲って来たのであった。

と、その時。

静江は、立っていることができず、床の上にしゃがみこんでしまったのであった。

「静江、大丈夫か。」

一郎があわてて、静江の肩をささえた。静江は、意識がハッキリしていないようだ。

静江が倒れてしまったのに、堤調査官は何の反応も示さない。あくまで冷酷な視線を藤山夫婦に向けているのだった。

そして、信じられない言葉を、藤山夫婦に浴びせるのであった。

「やっぱり、図星だったな。奥さん、売上をゴマカシているのがばれたんで、ショックだったんだろう。」

 この言葉には「ムカッと」きた多田税理士であったが、売上の証拠である売上伝票がないと、どうしようもないので、言葉もでず、「どうしよう。どうしよう」と自問自答を繰り返すが、何の解決策も思い当たらないでいたのであった。

 堤調査官は、容赦なく言い放った。

「事前に銀行の調査をしてきたんだよ。4年前と5年前に、丁度500万円づつ、ご主人名義の定期預金が増えているんだが、売上除外で作った資金なんだな。そうなんだろう。なあ、奥さん


 堤調査官は、うずくまっている静江に定期預金のことを問いただすのだった。

 静江は、頭がふらふらになって目を空けてても、何も見えない状態になってしまっていた。高血圧の症状が悪化たのだった。

 静江は、ボーっとする頭で「あーやっぱり、病気になったのは、あのせいだ」と直感していたのだった。

 静江は、なぜ病気の原因が分かったのだろうか?

 それにしても、多田税理士はどうしてしまったんだろうか。このまま、なす術はないのだろうか。

 青色申告をしている以上、売上の証拠である売上伝票がないのでは、多田税理士もどうしようもない。

 しかし、事態は急転直下の展開を見せるのであった。

 多田税理士に秘策はあるのかー!


次号をお楽しみに。


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