〜 タックスエンターテイメント小説 〜

「税務調査最前線」

第5話 『呪われた飲食店』第1章

 (〜病気になったのはなぜ〜)

 今回の小説は、「あの税務署員の名前は、一生忘れない」と話す、ある繁盛飲食店の税務調査のお話をネタにしております。

 実際に、税務調査の様子をインタビューしてきましたので、まずは、ご本人のお話をお聞き下さい。

 

『関東の方から戻って来られて、ここで飲食店を開業されたんですね』

 

ご主人「はいそうです。昭和49年でしたから、約27年前ですね。」

奥さん「向こうで、目標の貯金を貯めて帰ってきたんです。当時は、私達も一生懸命でしたから、今から考えると、結構、繁盛してましたね。あんな税務調査がなければ、いい思い出ばっかりなんですけどね。

 

 


『その税務調査ですけど、いつ頃のことですか』

 

ご主人「15年位前ですね。家内が大変な思いをしましたよ。」

奥さん「ホント!あの税務署員の名前は、絶対に一生忘れないわ。」

 

『では、税務調査の様子をお話してもらえますか』

 

奥さん「はい、店休日の朝10時ころ、いきなり『税務署です。税務調査に来ました。』って言って、自宅の方に来たんです。」

ご主人「それで、家内が税理士さんに電話をしたんですけど、なんとも対応がなってなかったんですよ」

奥さん「今思えば、そうよね。顧問の税理士さんに電話したら、『仕方ないから税務調査を受けなさい。』と言われたんで、そのまま、税務署の言うと通り、対応しなけりゃならなくなったんですよ。ほんと、税務署員の言いなりでしたね。」

 

『その顧問税理士は、来なかったんですか』

 

ご主人「そうなんです。その日は来なかったですね。後の調査は、担当者と二人で来てくれましたけど。」

奥さん「あの時、税務署員に帰ってもらうように言ってくれるか、かけつけて来てほしかったと、つくづく思いますよ。ほんと。」

 

『で、調査はどのように進みましたか』

 

奥さん「それはもう、税務署の言いなりですよ。レジと現金が何十円か違ってるとか。主人の個人的な預金証書まで見せろって言うんで、見せましたね。嫌だったのは、子供のお祝い金を貯めた預金証書も見せろって言うんですよ。」

 

 

ご主人「預金証書を取りに行く時もついて来るんですよ。他人に自分達の部屋に入ってもらいたくないですね。何も知らなかったから、なすがままでしたね。」

 

『税理士がいないと、不安だったでしょうね』

 

奥さん「そうですよ。まったく!その日は血圧が高くって、気分が悪くなってしまったんですね。それで、今日は、帰ってほしいと言っても、全然、聞いてくれないんですね。ヒドイと思いませんか。」

 

『本当ですね。常識外の行動ですね。』

 

奥さん「そうでしょう。こっちは、気分が悪くって、フラフラなのに、レジを見せろだの、伝票を持ってこいだの、遠慮なしに、私をコキ使ったんですよ。今考えても、悔しいわー。」

ご主人「家内は、初日の税務調査があってから、お客さんが全員、税務署員に見えるような気になって、ノイローゼみたいになって、見てられなかったですよ。

こんちくしょーって、今でも思ってますよ。」

 

『それで、調査の結果は、どうなったんですか』

 

奥さん「はい。初日は、レジペーパーと売上伝票を持って帰ったんですが。次に来た時には、酒の売上が少ないと言ってきたんです。」

ご主人「これは、私達も悪いんですが、親戚が来た時には、一緒にお酒を飲むこともあったんで、酒代はもらわないことが多かったんですね。それを、税務署員が言ってきたんですよ。」

奥さん「そうなんです。閉店まで、税務署員が客としていたんですね。それで、その日たまたま、親戚が来てたんですが、その時の人数と注文をメモしてて、酒の売上が洩れていると指摘してきたんです。」

 

 


『親戚の方は、しょっちゅう来るんですか』

 

奥さん「いいえ。たまにですよ。ホントに、たまたまのことなんです。実際に、お酒は何本か飲んでいましたからね。でも、月に1回来ればいい方なんですよ。それに、売上伝票が足らない日が何日かあると言ってましたね。」

 

『では、売上伝票がない分は、売上を隠してると言ってきたんですか』

 

奥さん「そうなんです。レジに記録は残っているんですが、どう探しても売上伝票がまとまってないんですよ。当時は、気分が悪いのに、調査に付き合わされて、非常に怖かったですね。だから、思考も止まってしまってたんですよ。ホント怖かったわ。」

ご主人「もう、家内が考え込んでしまって、困っている姿は、かわいそうで見てられなかったですね。言っときますけど、少しぐらいルーズなことはありましたけど、売上を多額にごまかしたりはしてなかったんですからね。」

 

『税理士は、どうしてたんですか』

 

奥さん「それが、なんにも言ってくれないんです。ただ、黙っているだけなんです。担当者の人もそうでした。見捨てられたって感じましたね。」

ご主人「税務署員は、どうしても売上洩れを認めろ、と聞かないんです。飲食店を始める前に貯めていた貯金なのに、金額が多過ぎるって言うんですね。商売を始める前の貯金なんて関係ないでしょう。でも、売上洩れがあると聞かないんです。税理士さんも、何も言ってくれないんです。とにかく、家内がノイローゼみたいになって、見てられなかったですね。なんで、こんな目に会うのかって、思いましたね。」

 

奥さん「それで、脱税すると刑務所に入ることもあるとか言ってましたんで、怖くて仕方なかったので、もう帰ってくれるなら、売上洩れでもなんでもいいからって気になって、売上洩れを認めることにしたんです。3年で600万円位の売上洩れになりましたね。」

ご主人「でも、私達はそんなに売上を隠してなんかいないんですよ。それに、指摘されていた売上伝票は、宴会場の売上なので、別の所に保管しているのを家内が思い出したんですよ。」

奥さん「そのことを、税理士さんに話したら、『もうあまりいろいろ言わん方がいいよ、黙ってなさい』と言われたんで、黙っていました。ホントに悔しいですね。あのことは、一生忘れません。」

 

最後に、何か言いたいことはありますか』

 

ご主人「ありますよ。税理士さんに!我々経営者には、税務調査の時にどんな権利があるのか、しっかり教えててほしいですね。あんな思いは、二度としたくないですね。」

 


 次号より、始まります「呪われた飲食店」は、このお店の話をネタにしています。呪われてしまったのは、いったいなぜなんでしょうか。その答えは・・・

次号をお楽しみに!


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