〜 タックスエンターテイメント小説 〜

「税務調査最前線」

第4話 『タレコミだな!』3章

 (〜こんなことは許されないぞ〜)

 

 前回2章のあらすじ

 

(顧問先2社同時調査の対応に苦慮する多田税理士は、一ヶ所で調査するように依頼し、活タ藤商会に牛井商事の帳簿を持って行かせたのであった。顧問税理士が同席しないまま税務調査が行われようとしたことに、多田税理士は憤慨していたのである。)

 

 驚いたことに、活タ藤商事では、すでに、税務調査が始まっていたのである。

 

 山本調査官は、女性事務員に、再度、机の引出しを見せるように迫ったのである。

 

 「さあ、机の引出しを見せて下さい。私物かどうかは見なくちゃ分からんだろうが」と、山本調査官。

 

 山本調査官は、何か、ピンとくるものを感じているのか、女性事務員の引き出しの中にこだわっている。

 

 もしかしたら、重要な秘密書類が女性事務員の引き出しにしまってあるのだろうか。

 

 税務調査では、タレコミ情報も重要な情報ととらえているようである。そう言えば、活タ藤商会では、2ヶ月程前に、社員を解雇する問題が起こっていたのである。

 

 その問題社員は、出荷を担当していたのだが、彼が担当するようになってから、異常に、商品の破損が多かったのである。

 

 そして、社内調査の結果、出荷担当者が商品を横流ししていたことが発覚し、解雇処分にしていたのだが、その社員が「逆恨み」をして、活タ藤商会の秘密を税務署にタレ込んだのかも知れない。

 

 果たして、脱税の事実が、女性事務員の引き出しの中に詰まっているのだろうか。

 

 活タ藤商会の事務所は、ピーンと張り詰めた空気が充満している。

 

 山本調査官は、今度はやさしく女性事務員に話かけて引出しを空けるように説得している。

 

 「そんな・・」と、話すのが精一杯の女性事務員は、抵抗するのを諦めたのか、無言で自分の机の引出しを空けたのであった。

 

 その引出しの中にあったものは・・

 

 

引出しの中は、事務用品ばかりで、帳簿やメモがあるわけでもなかった。

 

 山本調査官が、引出しの中のデパートの包装紙に包んである箱を指差し、これはなんだと女性事務員に質問をした。

 

 「それは・・・・」と、女性事務員は口を開かない。

 

 「いったいなんですか、この紙包は」と、山本調査官の質問は続く。

 

 女性事務員が、小さな声で「それは、デパートで買ったネクタイです。彼氏がもうすぐ誕生日なので昨日買っておいたんです」と、恥ずかしそうに返事をした。

 

 確かに、私物が入っていたので、女性事務員は引出しを空けたくなかったのだ。

 

 山本調査官は、女性事務員の引き出しを確認すると、今度は、他の者の机の引出しを空けさせ、中身を確かめたのであった。しかし、何も変わったものは、出てこなかったのである。

 

 なにか、イライラした様子の山本調査官は、信じられないことを言い出すのであった。

 

なんと、財布の中を見せろと言い出したのだ。

 

 個人の財布は、まったくの私物であり、税務調査であろうとも、見せる義務などないのである。プライバシーの侵害行為である。

 

 しかし、活タ藤商会の社長や社員達も、税務調査は初体験なので、どう対応したら良いのか分からず、山本調査官の言いなりとなっていたのである。


 全員の財布を見終わったころに、多田税理士が活タ藤商会の事務所に到着した。

 

 「安藤社長、おはようございます。すみません、遅くなってしまって。2社同時調査なんか、初めてなんで、私もびっくりしましたよ。」

 

 「いやー、先生。私もびっくりしてますよ。税務調査って、机の引出しをみたり、財布の中身を見たりするんですか。」と、安藤社長は、今までの税務調査の様子を多田税理士に話すのであった。

 

 話を聞いているうちに、だんだん多田税理士の顔に怒りの表情が表れてきた。

 

 「なんですってー。もう調査が始まったんですか。個人の財布を見せたんですか。」多田税理士は、信じられない調査のやり方に怒りを押さえきれない。

 

 「あんた達、私が来るまで調査は待ってなさいと言ったのに、なんで、調査を始めたんですか。それに、個人の私物やら財布を見せろとは何ですか。プライバシーの侵害じゃないか。」と、多田税理士は、強い口調で、山本調査官に文句を言うのであった。

 

 一方、山本調査官は、ヘラヘラ笑いながら、「いやー、先生が来られるのが遅いもんで、調査の協力をお願いしてたんですよ。みなさん、心良く、承諾してくださったんですよ。」と、平気で話すのあった。

 

 「ふざけるんじゃないよ。こんな調査をやっていいと思ってるのか。絶対に問題にするからね。」

 

 多田税理士のあまりの剣幕に、安藤商会の社長が、割って入ったのであった。

 

 「まあまあ、先生。私達は、もういいですから。落ち着いてください。本当に、もういいですから。」

 

 山本調査官も「先生、すみませんでした。今後からは、先生が来られてから調査を始めますので。」と、多田税理士に話したので、その場は、一旦、納まった。

 

 税務調査も、午後3時を過ぎた頃、多田税理士に事務所から電話が入り、今日の予定では、税理士会の会議が入っていることを知らされ、調査が終了する前に退席せざるを得なくなり、「無茶をするな」と、税務署員に告げ、活タ藤商会を後にしたのであった。

 

 山本調査官は、牛井商事の帳簿や活タ藤商会の帳簿をチェックしていたが、午後5時近くになったので、今日はこれで帰ると言って、帳簿類をまとめたのであった。

 

 しかし、山本調査官は、又しても、とんでもないことをして帰ったのである。

 

 いったい、どんな許されないことが、起こってしまったというのか。

 

そして、多田税理士は、思い切ったことを考えついたのである。多田税理士は、いったい何を考えたのか。

 次号4章をお楽しみに!


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