〜 タックスエンターテイメント小説 〜

「税務調査最前線」

第4話 『タレコミだな!』1章

 (〜こんなことは許されないぞ〜)

 

 クーラーが苦手の多田税理士は、毎日の猛暑で寝不足ぎみである。体調が整わないと、思考力も劣るもので、「今日は調子が悪いな。たまには、早くかえるか」と多田税理士はつぶやいて新聞をめくっていた。

 

 そんなころ、事務所の電話が鳴り、女性事務員が受話器をとっていた。

 

「おはようございます、多田税理士事務所の幸田です。はい、安藤商会の藤木さんですね。所長はおりますので、かわります。」


 女性事務員の声に、「やれやれ元気をださんとね」と独り言を言って電話にでる多田税理士であった。

 

 「あー、もしもし多田先生ですか。安藤商会の藤木です。突然でなんですが、今会社に税務署の方が3人みえてるんですよ。どうしたらいいでしょうか。」と、安藤商会の社長の藤木からの電話であった。

 

「税務署が来てますか。事前通知なしですね。困ったもんですね。分かりました、税務署員を電話に出して下さい。」と多田税理士は、安藤社長に話したのであった。

 

 多田税理士が、受話器を持って待っていると、また、事務所の電話が鳴った。

 

 女性事務員が電話にでるが、不思議そうな顔をして応対している。多田税理士も女性事務員の顔を見て、どうかしたのかなと思っていた。

 

「先生、お話中ですけど、桜井商事さんから緊急のお電話だそうなんですがどうしましょうか」と、多田税理士に要件を伝える事務員の幸田の顔がこわばっている。

 

 「今電話中だから、後でかけると伝えなさい」と返答する多田税理士に、幸田事務員は、「それが、税務署がきてるそうなんですよ。」

 

 「えー桜井商事さんにも税務署が来てるって。こりゃいったいどうなってるんだ。」多田税理士は、すっかり困ってしまった。

 

 株式会社安藤商会は、通信販売をしている会社で、本社を博多区においている会社である。最近は、テレビショッピングが大当たりして、年商も20億円を超える勢いで急成長している会社なのである。そして、その活タ藤商会の社長が、同じく社長をしている有限会社桜井商事にも税務調査が同時に入ったのである。

 

 牛井商事は、社長の藤木の父が設立した商事会社で、去年父親が亡くなったので、息子の藤木が社長になっていたのである。

 

 活タ藤商会は、牛井商事から商品を仕入れることはあったが、テレビショッピングに向く商品を牛井商事が扱っていないので、さほどの取引量ではなかったのである。

 

 特段、両社の関係に不明な点などないはずだと多田税理士は考えていが、しかし、税務署は関連会社2社に同時に税務調査に来たのである。

 

 多田税理士は、「どうしようか。片方に調査立会いに出ると、もう一方の会社には行けないし。かといって、両社ともお客さんだし。体は一つなのにどうしようもないな。」と、混乱してしまっている。

 

 そうこうしている内に、活タ藤商会の方に税務調査に来ている税務署員が電話にでた。

 

「おはようございます。博多税務署の特別調査官の山本です。本日は、株式会社安藤商会さんの税務調査にお伺いしています。先生、いつごろ来られますか」と一方的に、会社に来るように話す税務署員であった。

 

 これには、多田税理士もカチンときた。さあ、これから、多田税理士の反論である。少々頭にきているようなので、早口にしゃべりだすのであった。

 

「いきなり調査はないでしょう。それに今すぐ来いとはなんですか。私の都合を無視するんですか。それに、藤木社長の別会社にも、同時に調査入るとはどういうことですか」とやや興奮ぎみの多田税理士に、山本調査官は平然と、「先生は来られなくてもかまいませんよ。社長さんにお話が聞ければいいですから」と答えるのであった。

 

黙って、「はあそうですか」などと言える訳もなく、多田税理士は、「兎に角桜井商事に電話するから、なにもしないで私の電話を待っていて下さい。」と。山本調査官に伝え電話をきると、牛井商事の電話にでたのであった。

 

「もしもし、経理の武田さんですか、税務署員とかわって下さい。」と牛井商事の経理事務員に伝える多田税理士。

 

「もしもし、博多税務署の調査官の山田です。今日は、税務調査でお伺いしております。」

 

「そんなことは分かってますよ。あなたが責任者ですか。私の顧問先に同時に税務調査に来るなんてどういうことですか。」と多田税理士。

 

「いや、責任者は山本特別調査官です。」と答える山田調査官に、「じゃあ山本特別調査官と話すから、あなた方は何もしないでいて下さい。いいですね。」

 

 多田税理士は、牛井商事に来ている税務署員に何もしないように釘をさし、活タ藤商会に電話をかけようとして、はたと考え込んでしまった。

 

「こんな時は、どっちに税務調査に行けばいいんだろうか。困ったなあ〜。そうだ、沖山先生に相談した方がいいな」と多田税理士は考えた。そして、沖山税理士に電話をかけたのであった。

 

「税理士の多田です。沖山先生いらっしゃいますか」

「はい、沖山です。ああ、あんたね。又なんかあったとね。うんうん。あーそうね。2社同時に税務署が調査にきとるとね。そうね、そしたらこんな風にしたらいいよ。」

 

 沖山税理士から、税務調査の対策を詳しく聞いた多田税理士は、ホット一息ついていた。

 

「やっぱ、沖山先生はすごかね〜。よう知っとらすねー。ほんと助かる。」多田税理士は、沖山税理士の博識に関心していた。

 

 一方、活タ藤商会では、険悪な空気が漂っていた。

 

なんと、山本調査官は、とんでもない行動にでようとしていたのである。

 

 とんでもない行動とは、いったいなんなのか。

 

そして、多田税理士は2社同時調査にどのように挑んでいくのだろうか。

 

次号第2章をお楽しみに!

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