税務調査最前線


第2話 4章『クリスマスプレゼント』

 (売上が洩れていたのに、税金が戻る?)

 

前回3章のあらすじ

 

 (ズラカシの法則を納得した税務署員だが、資料を取り出し相沢社長に話しかけると、社長は動揺してしまったのである。その訳は・・)

 

 山田調査官は、相沢社長に書類を見せながら質問するのであった。

 

「社長さん、6年前と7年前の12月に、御社の取引先の株式会社博多建設から100万円づつ社長さんに支払った記録があるんですが、このお金は何の入金なんでしょうか」

 

「博多建設さんは、今回問題になった電飾資材を購入している会社ですよね。博多建設さんが何で会社ではなく、社長個人にお金を払うんですか」

 

 多田税理士も税務署員の言うことを聞いて、「そうだよね。なんで、販売先の会社が社長にお金をはらうんだろう。先方とは、会社取引だけなんじゃないのかな」などと、考えていた。

 

すると、相沢社長は、気まずそうに話し出すのであった。

 「実は、・・・」次の言葉がなかなか出てこない。

 

 「実は、そのお金は博多建設さんからの紹介料なんです。当時は、親父ともうまくいってなくて、たまた

ま、デパートの社長から、クリスマス用の電飾をつけてくれないかと頼まれたんですが、うちは卸でしょう。電飾を配線したり取り付けたりできるヤツはいませんし、知り合いの博多建設さんに相談したら、快く引き受けてくれたんです。」

 

 

 「それで、私も当社から外注に出そうかとも思ったんですが、親父に相談するのが嫌で、博多建設さんを直接デパートに紹介したんですよ。」

 

 「そして、デパートの紹介で電飾の取り付け工事が一気に増えてしまって、九州中に電飾工事の仕事が広がって、喜んだ博多建設がお礼に(紹介料)をくれたんですよ。」

 

 ここまで、内容を話すと、相沢社長はタバコに火をつけて、落ち着きを取り戻そうとしていた。

 

 相沢社長は、チラッと多田税理士の方を見て、話を続けるのであった。

 

 「今は、多田先生に顧問をお願いしてますが、当時は年配の税理士さんが顧問で、会社のことで相談してもロクスッポ返事も返してくれない方だったので、紹介料の件も相談しそこなってしまったんです。」

 

 「それで、2回ほど紹介料をもらったんですが、個人で申告はしませんでした。申告しようと思ったんですが、つい・・・」ここまで、話すと相沢社長は黙りこんでしまった。

 

  話を聞いていた山田調査官が話し出すのであった。

 

 「社長、今は博多建設さんに電飾資材を販売されていますよね。いつから、なんですか」

 

 「はい、私も紹介料をもらって申告しないのも気まずかったですし、うちの売上もだんだん落ちてきたもんで、博多建設さんに相談して、うちから仕入れてもらうようにしたんです。それまでは、博多建設さんがメーカーから仕入れられていたようです。」

 

 相沢社長も、ここまで話すといくらか落ち着いてきたようである。顔色も普通に戻っていた。おそらく、観念したのであろう。

 

 山田調査官は、「じゃあ、社長は会社が儲けるべきお金を自分でもらったということなんですね。」とハッキリとした口調で相沢社長に話すのであった。

 

 「そういうつもりはなかったんですが、なんせうちは卸ですから、電飾の取り付け能力もありませんし、電飾資材も扱ってなかったもんですから、当時は紹介するしかなかったんですよ。」

 

 「今の電飾資材のメーカーさんも博多建設さんが紹介してくれたんですよ。うちには、クリスマス用の電飾資材なんかどのメーカーから仕入れていいか知ってるヤツなんかいませんよ。うちは、主に鉄道関連の電気資材卸ですからね。」

 

 相沢社長は、当時の紹介に至った状況を説明するのであった。内心は、税金をいくら払うんだろうか、会社の収入になるんだろうか、個人で払うんだろうかと考えていたのである。

 

 山田調査官は、「社長そういう状況だったら、会社の収入にキチンと上げてもらわないと困りますね。ねえ、多田先生もそう思いませんか」と多田に話を振ったのである。

 

 多田税理士は、「私は、そうは思いませんね。」と反論するのであった。

 

 「確かに、今現在は、電飾資材の売上は会社で上がってますが、当時の紹介料まで会社の収入に上げる必要はないんじゃじゃいですか。社長は当時、総務部長であって取締役でもなかった訳ですし、紹介料をもらうことが会社の本業でもない訳ですし、一概に会社に損害を与えたとも言えないんじゃないでしょうか。」

 

 「また、デパートからは、電飾の取り付け工事の依頼があったのであり、当時の相沢商事さんの主たる業務ではありませんし、定款にも工事業は何も記載されていないじゃないですか」さらに続ける多田税理士。

 

 「従って、個人的に紹介した謝礼を会社の収入に計上することはおかしいんじゃないですか。それに、紹介料は博多建設さんが、当時、総務部長だった相沢社長に自主的にしたことであって、会社間取引とは言えないと思うんですがね」

 

 多田税理士は、自説に自身があるのか、一歩も引かない様子で税務署員に紹介料についての見解をしゃべりまくっていたのである。

 

 「もしですよ、観光バスの運転手がみやげ物屋を紹介してですよ、そのみやげ物屋が運転手に紹介料を払ったら、その紹介料はバス会社のものになるんですか。仲居さんが、お客さんからチップをもらったら、そのチップは仲居さんの勤める旅館の収入になるんですか。おかしいですよ。」

 

 まだ、続きそうな多田税理士の話しに口をはさむ山田調査官である。

 

 「先生、もし個人の収入であっても、雑所得として申告指導すべきだったんじゃないですか。」

 

 この発言にはカチンときた多田税理士は、口調がきつくなってきた。

 

 

 「俺が顧問税理士じゃなかったんだから、俺に言うんじゃない。それに、単純な無申告の場合は、時効は5年という判例があるから、6年も7年も前の話しだったら時効が成立してるじゃないか。」

 

 左山統括官は、じっと話を聞いていて何かを決心したように話し出したのであった。

 

 「先生、分かりました。紹介料の件は、当方も検討の余地があるとは思いますが、今回は指導ということで帰ります。」と言い残し、税務署員は帰った。

 

 「指導とはなんだ」と思いながらも、これ以上話す必要がなくなったので、社長に挨拶をして会社を出て行く多田税理士であった。また1件調査が終わった。

 

 


次回「税務調査最前線」予告

 次回第3話は、「家政婦は見た!」そんなことまでしなくちゃいけないの)

さあ、家政婦さんは何を見たのでしょう。そして、何をさせられようとしているのでしょう。

必ずあなたも「こんなことがあっていいのか」と思うでしょう。

 

それでは、第3話をお楽しみに!

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