税務調査最前線

第2話 3章『クリスマスプレゼント』

 (売上が洩れていたのに、税金が戻る?)

 

前回2章のあらすじ

 

 (多田税理士の説明では、今回の売上洩れは、1回だけのものではなく、連続しており、正しい売上を計算すると税金が戻ってくることになるのです。この「ズラカシの法則」に対して、税務署員はなんと答えるのでしょうか。)

 

 「売上洩れは、売上洩れですから、修正申告ということになるんじゃないでしょうか。今まで売上洩れの修正申告をお願いしてきましたし、そんなこと言われたのは初めてです。」

 


 驚くことに、税務署員は論理的な説明は何一つなく、ただ、「売上洩れだから」一点張りの主張を続けるのであった。

 

 多田税理士は、あきれ顔で言うのであった。

 

「税務署は、正しい申告を指導するところでしょう。売上洩れは事実ですよ。そして、売上過大も事実ではないですか。両方の修正をすると、所得は以前より少なくなるじゃないですか。」

 

所得が少なくなれば、当然、以前支払った税金が多すぎたことになるでしょう。だから、前期については、申告期限から1年以内だから更正の請求をして税金を戻してもらうことになるじゃないですか。当たり前の話でしょう。」

 

 多田税理士は、沖山税理士からトイレ電話で教えてもらったことを、丁寧に何度も山田調査官に話すのであった。

 

 しかし、山田調査官は、「売上洩れだから」としか発言せず、多田税理士もあきれ果ててしまっていた。

 

「このまま話しても平行線だから、この件を署に持ち帰って検討して下さい。」と、多田税理士は山田調査官に告げ帰ってもらったのである。

 

 税務署員が帰っていった後で、多田税理士は、相沢社長に話し掛けるのであった。

 

 「いやー、社長。クリスマスの臨時売上が年々少なくなっていて助かりましたね。このままだと、税金が戻ってくることになりますね。今回の税務調査は、クリスマスプレゼントを持って来てくれたようなもんですね。良かったですね。」

 

 すると、相沢社長は予想もしないことを言ったのである。

 

 「いやー、それは困りましたね。」

 

「税金が戻るということは、利益が減るということですよね。ということは、決算書の利益が減ってしまうんですよね。困ったなー」

 

「なんとか、このままか、1月の売上を12月に戻す訳にはいきませんか。税金は戻ってこなくてもいいんですよ。」

 

多田税理士は、相沢社長の話の内容がさっぱり分からないでいる。会社の役に立ったつもりなのに、困ったとはどういうことなのだろうか。自分がやってきたことが、無駄だとは思いたくない多田税理士は、相沢社長に説明を求めたのであった。

 

「社長、いったいどうゆうことなんですか。余分な税金は払いたくないって言ってたじゃないですか。今回の場合、税金を払うんじゃなくて、税金が戻るんですよ。」と多田税理士は、相沢社長に疑問をぶつけるのであった。

 

「先生、私も余分な税金は払いたくないし、また、そんな余裕もありませんよ。ただ、今回は税金が戻ってくるのは困るんですよ。」

 

 相沢社長は、多田税理士になぜ困るのか話し始めたのだった。

 

 


「先生、実はいま、銀行に融資をお願いしてましてね。それで、業績が下がってきているのがちょっと引っかかるらしいんですよ。」

 

 「ですから、いま以上に利益が減るようだと、銀行融資がおりなくなるかも知れないんですよ。」

 

 相沢社長の説明で、やっと納得した多田税理士は、今後の対応について話すのであった。

 

 「社長、分かりました。そういう理由でしたら、1月の売上洩れを12月の売上に戻す決算書を作りましょう。税務署も調査に来て、税金を戻すんじゃイヤでしょうが、売上をもどすことについては何も言わないでしょう。」

 

 「いやあー、先生そうしていただくと助かります。利益が増えれば、銀行融資もおりやすくなりますからね。今は、税金の還付より、利益アップの方が助かります。」相沢社長は、安心した表情になっていた。

 

数日後、山田調査官は、上司の左山統括官を連れて相沢商事にやって来た。

 

左山統括官は、多田税理士の言うことが正しいことを伝えたのである。

 

「先生、今回は勉強になりました。私たちも、思い込みが強かったようです。それで、今後のことなんですが、どういう風にされるんでしょうか。」

 

「本来ならば、前期分については更正の請求で、税金を戻してもらって、2年前と3年前の売上過大については、税務署に更正していただきたいと考えているんですが、」ここまで話して、しばらく間をおく多田税理士であった。そうです、「もったい」をつけている訳なのです。

「今回は、社長の了解もあって、1月の売上を12月に戻す処理だけしようと思っているんです。それで文句はないですよね。」

 

「あー、もうそれで結構です。そうしていただければ私たちも助かります。」

 

 左山統括官は、ニコニコ顔で返事をするのであった。そして、一件落着するのかと思ったら、山田調査官が、黒いかばんから一枚の資料を取り出して、相沢社長に話しかけたのである。

 

すると、相沢社長の顔がみるみる赤くなり、多田税理士にもただ事ではないことが見て取れたのであった。

 

 

いったい何が起こったと言うのか!

 

山田調査官は何を話しかけたのか!

 

事態は思わぬ方向に展開するのであった。

このあと、どうなってしまうのか。

 

次号をお楽しみに!


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