税務調査最前線

第2話 2章『クリスマスプレゼント』

 (売上が洩れていたのに、税金が戻る?)

前回1章のあらすじ

 

 (多田税理士の新規顧問先の相沢商事に、博多税務署の法人税課の税務調査が行なわれ、クリスマス用の電飾の売上が洩れていることが判明した。多田税理士はあきらめ半分で沖山税理士に相談したところ、なんと、税金が戻ると教えられた。果たして、売上が洩れているのに、税金が戻るのだろうか。)

 

 「エー!。沖山先生そんなことがあるんですか。」

 

 多田税理士は、とても信じられないといった気持ちで沖山税理士の話を聞いている。

 

「あんたの話しでは、相沢商事は毎年クリスマスの臨時売上は、4年前から、現金で入金した時に売上を記帳していたんだよね。」と、沖山税理士が話す。

 

「はいそうです。相沢商事さんは、売上のほとんど

が掛売上で、売掛帳はキチンと整理してあったんで

すが、現金売上については経理の人の勘違いで、実際売上の翌月の入金時に売上として記帳していたそうです。それも、クリスマス臨時売上が始まった4年前からそうなっていたそうです。」と、答える多田税理士。

 

 沖山税理士は、更に質問する。

 

 「そして、相沢商事の決算は12月だから、翌月1月の入金は、前期の売上になるから、前期の売上洩れが毎年継続してきたということだね。」

 

 「はいそうです。」とうなずく多田税理士。

 

 更に、沖山税理士は多田税理士に質問する。

 

 「そして、相沢商事のクリスマス臨時売上は、4年前のスタート時点から年々減少しているということなんだね。」

 

 「はいそうです。クリスマスの臨時売上は、4年前の12月は300万円・3年前の12月は200万円・2年前の12月は150万円で、1年前の12月は100万円の売上でした。年々、臨時売上も電気資材の卸売上も減少が続いています。今年の12月決算では、赤字になりそうな状況です。」

 

 相沢商事の売上洩れの状況を細かく話す多田税理士に対して、沖山税理士は相沢商事の利益状況を質問するのであった。

 

 「今年は赤字だそうだが、4年前から1年前までの事業年度の利益は出ているの」

 

 「はい。大体毎年200万円ぐらいの利益は出していたそうです。」と多田税理士が答えると、沖山税理士はあっさりと話したのである。

「じゃあ。税金を戻してもらえるね。」

 「法人税も県民税も市民税も事業税も戻してもらえるね。」

 

 訳が分からない多田税理士は、沖山税理士に再びたずねるのである。

 

 「先生。どうして売上が洩れているのに、税金が戻るんですか。普通こんな場合は、前期に100万円の売上洩れで修正申告して、追加の税金を払うんじゃないんですか。今まで、税務署もそう言って修正申告をしてくれと言ってきたし、我々も修正申告するのが当然だと思ってたじゃないですか。何がなんだかさっぱり分からないですよ。」

 

 すっかり混乱している多田税理士に対し沖山税理士は笑いながら説明するのであった。

 

 「あんたはね、勘違いしてるんだよ。つまりね、売上洩れが単年度で発生したら、それは正しい事業年度の売上に戻して、修正申告せんといかんけど、今回の場合のように連続して売上洩れがある場合は、正しい売上はいくらかを考えないと、いけないんだよ。」

 

 まだ、分からない多田税理士である。

 

「つまりね、1年前の事業年度は、確かに100万円を翌事業年度に売上計上してた訳だから、100万円は1年前の事業年度の売上洩れだけど、その1年前の事業年度に、現金売上に入っている150万円は2年前の売上だよね。だから、その150万円をそのまま1年前の事業年度の売上とするのは間違いだよね。」

 

 ここまでは、理解できる多田税理士であったが、まだ先が読めないでいる。

 

 「じゃあ、1年前の事業年度の正しいクリスマス臨時売上は100万円なのに、100万円の修正申告しかしないということは、クリスマス臨時売上は合計で250万円となってしまうでしょう。」

 

 あっそうか、と何やら気付きはじめた多田税理士である。沖山税理士の話しは続く。

 

 「1年前の事業年度の正しいクリスマス臨時売上は100万円だから、100万円の売上の追加計上が必要であることは間違いないよね。では、150万円は2年前の売上だから、1年前の売上から除く必要があるのも分かるよね。」

 

 「そしたら、1年前の事業年度の修正事項はプラス100万円とマイナス150万円で、差引きマイナス50万円となって、売上洩れではなくて、50万円の過大売上ということになるよね。」

 

 一つ一つ順を追って話す沖山税理士の話に、聞き耳を立てる多田税理士であった。

 

 「だったら、1年前の事業年度の利益は200万円だけど、過大売上の50万円を引くことになるから、利益は150万円になるよね。そしたら、1年前の事業年度は、200万円に対する税金を既に払っている訳だから、正しい利益の150万円に対する税金より多く払っていることになるよね。」

 

 「だったら、1年前の事業年度は修正申告ではなくて、税金を戻してもらう「更正の請求」になるよね。」

 

 沖山税理士の説明はまだ続く。


 「そして、年々クリスマス臨時売上が減少しているとしたら、正しい売上の修正を計算すると、2年前は売上洩れ150万円と過大売上が200万円で差し引き50万円の過大売上となるし、3年前は売上洩れ200万円と過大売上300万円で差引き100万円の過大売上となり、4年前は売上洩れ300万円となるが、時効が成立しているので修正申告の必要はないということになるよね。」

(注・平成16年4月1日以後に法定申告期限等が到来する法人税の除斥期間は

5年とされました。つまり、時効は5年間に延長になってます。)

 つまり、法人の場合には、1年間を事業年度として所得の計算をすることになっており、相沢商事の場合は12月を決算期とする事業年度で所得の計算をすることになっている。そして、売上はそれぞれの事業年度に発生した売上でなければならないことになっており、入金時で売上を認識することは認められていないのである。

 

 要するに、それぞれの事業年度に発生した売上が正しい売上なのであって、その正しい売上に修正しなければならないのであり、売上の洩れだけを調整するのは、不合理でおかしな話なのである。

 

 そして、1年前から3年前の事業年度は、それぞれ正しい売上に調整した結果、売上の過大計上となり、1年前は更正の請求という手続きで税金を戻してもらうことになり、2年前から3年前は税務署に更正処分をしてもらい、税金を税務署の方から戻してもらうことになるのである。

 

 そして更に、4年前の売上洩れ300万円は、単純なミスであり、仮装・隠蔽という脱税行為ではないので、3年間の時効が成立し、その税務上の時効の利益は受けなければならないことになっているのである。つまり、4年前の売上洩れは修正申告しなくても構わないのである。
(上記注のとおり時効は5年に延長になってます)

 

 多田税理士は、納得したのであった。

 「ハアー、先生そういうことなんですね。よく分かりました。ありがとうございました。」

 

 「はいはい」とだけ言って、あっさり電話を切る沖山税理士であった。

 

 そして、トイレ電話を終わって出てきた多田税理士は、ニコニコしながら、沖山税理士から聞いた話を博多税務署の山田調査官に話したのである。

 

 「以上のようなことですので、当方としましては、1年前の事業年度については「更正の請求」をすることになりますし、2・3年前の事業年度については税務署さんの方から「減額の更正処分」をして頂くことになりますね。「減額更正」は5年間
(注・平成16年改正で法人税の減額更正は7年になりました。)でしたよね。」

 

 ここまで多田税理士が話すと、山田調査官の顔が見る見るコワバッテきた。

 

 そして、山田調査官の口から、信じられない言葉が飛び出すのであった。

 

 その言葉とは、・・・

 

次号をお楽しみに!

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