税務調査最前線

第1話 第2章『フルーツ店の悲劇』

前回1章のあらすじ

 (フルーツ店に事前の連絡もなしに税務署員があらわれ、現金の残高と帳簿の残高が合っていないことを指摘された店主が、説明をもとめられていた)

 店主は「合わないのが普通ですよ。」
「うちではね、
夜7時になったら女房がレジを締めるんですよ。
そして、現金とレジの売上を点検してから現金出納帳をつけているんです。
その日の売上金は、袋に入れてありますよ。」

「女房はレジ締めが終わると先に帰って晩飯の用意をしてますが、
私は9時まで営業しますから、閉店までの売上が帳簿と合わないんじゃないんですか」

 佐藤統括官は怒ったように店主に言ったのでした。

「いいや、現金の記録と残高が合ってないのはおかしい。売上をゴマカシているんだろう。」

 店主「そんなことはありませんよ。今のやり方でいいって税理士の先生も言われたんですよ。」

佐藤統括官「いいかげんなことを言うんじゃない。あんたのところは1日2万円の売上洩れだから、1ヶ月で60万、1年で720万だから、7年で5,000万円の売上隠しだな。」

 一気にまくしたてる税務署員の言動に、すっかりおびえてしまった店主。そうこうしているうちにやっとフルーツ店の顧問税理士が到着した。

 「税理士の多田です。事前通知なしで、いきなり調査は困りますね。」険悪な雰囲気を感じ取った多田税理士は、ここまで言うのがやっとだった。

 「先生、現金商売の場合は、事前通知をしないこともあるんですよ。それに事前通知をするかしないかは税務署の判断ですからね。」「そんなことより帳簿の売上と現金が合ってないのはどうしてですかね。現実に2万円違っているのはどうしてなんですか。」

佐藤統括官は、真面目でおとなしそうな多田税理士を完全にナメテかかっていました。

 多田税理士は、このフルーツ店はレジを締めてからの売上は翌日の売上に入れていること、決算日にはレジ締めを閉店時に行っていること、帳簿は真面目につけてあること、店主や奥さんが売上をごまかす人ではないことを丁寧に説明したのでした。

 店主は、顧問税理士が来てくれたことで不安感も和らぎ、ゴマカシなんてしてないから、その内分かってくれるだろうと思っていた。

 が、しかし事態はとんでも

ないことに発展していったのである。

 

佐藤統括官はひとおおり税理士の話を聞き終わると、カバンの中から書類を取り出して、「ご主人、オタクの取引銀行の佐世保銀行には預金の残高が少しなのに、隣町のハウステンボス銀行に1億円の預金があるね。この1億円は売上をゴマカシて貯めたんだろう」「オタクの申告した所得では、1億は貯まらんよ」

 確かに、このフルーツ店は所得300万程で夫婦二人がやっと食べて行くことが出来るくらいで、貯金する余裕はない状況であった。


 びっくりしたのは多田税理士であった。

店主とは10年程前銀行の紹介で知り合い、「あまり儲かってはいないが真面目に商売をする人だ」という感想を持っていただけに、1億円の預金に驚いてしまったのである。

「ほんとに1億円あるんですか?どうしたんですかその預金は」恐る恐る店主に質問すると

「その預金は20年前に息子が交通事故で亡くなった時の保険金を貯めといたんですよ」「そんな売上をゴマカシたりしてませんよ」。

 多田税理士は「そんな事情だったら預金の履歴を調べれば分かることだし、税務署も調べればすぐに納得するだろう」と考え、税務署員に預金の履歴を調べるように伝え、過去の帳簿も調査するように要請したのであった。

このまま調査はスムーズに流れるかと税理士も店主も思っていたが、

佐藤統括官の口から驚くべき爆弾発言が飛び出したのである。


その発言とは・・


 つづく・・(次号をお楽しみに)

 

 ★今回の税務調査の対処ポイント

 

@     この佐藤統括官は全てにおいて、乱暴な言動であり、相手を威圧する言動であった。

  人権を尊重しないような発言には、抗議する。

 任意の調査では、警察のような取調べの権限は税務署にはない。

A     いきなり多額の売上洩れを言い出すのは、不良税務署員のいつもの手。高い税額を言っておいて、後の修正申告での税額を安く思わせ、納得させる手段。

  売上洩れで課税するためには、証拠が必要。

B税務署員が7年間の売上洩れと言ったのは、時効のため。脱税の時効は7年。通常の申告洩れでの時効は3年。うっかりミスは脱税にはならない。二重帳簿をつけるとか、税金逃れのための「偽り行為や不正な行為」があれば、脱税となる。

  脱税の場合、追徴税額と追徴税額の35%(又は40%)の税金が加算され、延滞税とい  う利息も払わねばならない。

  脱税の時効が7年ということは、7年以上前の申告洩れの場合、不正行為かどうかに拘わ  らず時効が成立し、その時効の利益は受け取らなければならいことになっている。
  (国税通則法)


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